現実はSF小説より奇なり?中国の「芝麻信用」
自分の職業、学歴、収入。色々な個人情報に基づき、すべての人の価値が「点数付け」され、その高さに応じて恩典が受けられる。
SFフィクションの世界では、このような「社会信用システム」がもたらす、格差社会が描かれてきました。
しかし、実はもう数年前から、隣の国で、こうしたシステムが運用されているようです。
その名も「芝麻信用」(読み方:ジーマ信用)。
「芝麻」が「ごま」の意味であることから、英語では「セサミ・クレジット」と呼ばれます。
中国の大手IT企業「アリババ(Alibaba)」系の電子マネー「支付宝(Alipay:アリペイ)」のサービスの一つのようです。
「芝麻信用」が普及した社会背景
そもそも、なぜこんな一見恐ろしい社会信用システムが浸透したのか?
その背景には、中国におけるスマホ決済の急速な普及がありました。
最近やっと、日本でもLINE Payが使えるお店が増えてきましたが、中国ではスマホ決済が基本のようです。
ちなみに普及率は、2017年時点で日本が6%に対し、中国は98%以上。日本のほうが、ずっと遅れているんですね。
(もっとも、中国でスマホ決済が広まった背景には、ニセ札の横行があり、切実な理由で広まったと言えそうです)
そして、中国でもっとも普及しているスマホ決済が、アリババの「アリペイ」だというわけです。
去年まで、「WeChat Pay(微信支付、ウィーチャットペイ)」も二強とされていましたが、芝麻信用の普及もあってか
今や、アリペイ一択という状況に変わりつつあるようですね。
ユーザは「芝麻信用」にどんなデータを渡しているのか
信用の点数化は5つの領域──
1.身分特質(ステイタスや高級品消費など)
2.履約能力(過去の支払い履行能力)
3.信用歴史(クレジットヒストリー)
4.人脈関係(交友関係)
5.行為偏好(消費面の際立った特徴)
に分けて行われている。950~700が「信用極好」
699~650が「信用優秀」
649~600が「信用良好」
599~550が「信用中等」
549~350が「信用較差(やや劣る)」である。
スマホ決済と紐付いていることから、ユーザがいつ、どういう品物やサービスにお金を使ったのかということは分かります。
ただ、それだけでは情報が限られているので、芝麻信用は、ユーザに対し
「もっと個人情報を教えてくれたら、もっと信用スコアを上げるよ」と、働きかけているようです。
例えて言うなら、いわゆるクレジットヒストリーに加え
Facebookの人脈、Moneytree/Forwardに連携しているお金の出入りの情報、Googleの検索履歴…
そういうものを、すべてアリババに明け渡しているような感覚ですね。
実は中国政府が社会システム構築計画を推進していた
芝麻信用のスコアは、その人の「信用」そのものに関する点数なので
上がると、ローンの金利が下がる、出国手続きが一部簡素化される、ホテル等での待遇が良くなるなどの恩典があるようです。
一方、点数が低いとどうなってしまうのか?
現在は、点数が低くても特に罰則はないようですが、2020年以降はペナルティも課されるだろうと言われています。
例えば、インターネットの速度制限がかかったり、ハイクラス求人情報が見られなくなる、などがあるようです。
では、なぜ2020年なのか?
実は、芝麻信用は、政府主導で進められている国家政策「社会信用体系建设规划纲要(社会信用システム構築計画綱要)」の、一環のようで
2014年から2020年までの7ヵ年計画で、推進されるようです。
国民に信用スコアを意識させ、不正を減らし、健全な社会経済活動を促すというのが、制作を進める表向きの理由ですが…
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